本革製コインシリンダーへのデザイン加工

遅くなりましたが,冬のイベントお疲れ様でした.
コミックマーケット91およびコミックトレジャー29にて本革製500円玉用コインシリンダーを頒布させて頂きました.
おかげさまで沢山の方にご覧頂きまして,用意した分はひとつを残して捌けてしまいました.実際手に取って見て頂ける方も夏コミより随分と増えまして,ご好評頂けていると実感できたイベントとなりました.今後も継続して出してゆきたいと思いますので,どうぞよろしくお願いします.


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さて,今回イベントでは上写真のようなものを展示していました.
ものとしては頒布品とおなじ本革製500円玉用コインシリンダーですが,キャラクターの絵を焼き入れたデザイン試作サンプルです.今回はこのサンプルについてご紹介いたします.






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写真の通り二本ありまして,どちらも我らがALcotのガチャガチャで出てくるピンズの中から過去の絵素材を散りばめた形のデザインにしています.キャラクターは片方が実妹キャラクターを,もうひとつが義妹キャラクターをあしらった,私の趣向丸出しのチョイス.言わばALcotシスターズコインシリンダーですね.

革は落ち着きのある茶色のサドル革で,加工はレーザーによる焼き入れと,その上からさらに型押し(素押し)を施す二段階加工.レーザー焼き入れのシックな焦げ茶の色合いと,キャラクターを立体的に魅せる凹凸の具合がシンプルながらもしっかりとした存在感を出してくれています.質感といい,手触りといい,出来映えといい,持っていれば人に自慢したくなること間違い無しの逸品です.


・制作経緯
この記事では試作サンプルと紹介しましたが,これは私が自分用のコインシリンダーとして制作したものでもあります.そもそも本革製コインシリンダーを作ろうとしたこと自体,私がコインシリンダーを使いたかったからだったのですが,開発と頒布準備にかまけて自分用の制作を後回しにしてしまっていました.夏コミが終わってさぁ作ろう!どうせ作るなら制作者特権を最大限に活かした特別なものにしたいよね?じゃあ・・・・・・といろいろ計画を練り上げて制作に取りかかりました.

デザインは,と考えるまでもなく,私がALcotガチャで回すためのコインシリンダーなんだから,やっぱりデザインはALcot関連.レーザー加工と型押しの安定度を考えるなら,線が太くて扱いやすいSD絵が良いだろう,よし!あおな先生のピンズ絵を使わせてもらおう!という流れ.幸いにもALcotさんはオフィシャルで痛車向けに素材の提供を行なってますから,その窓口を通じてコインシリンダーへの素材提供を頂きました.



・制作の流れ
構造は通常のコインシリンダーと同じですが,素材を切り出す前に絵を入れる工程が入ります.

まず,提供してもらったデータはピンズデータなのでカラーですが,レーザー加工なので塗りを排除して線画のみを取り出して,モノクロ化,レーザーの軌道データへと変換します.

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目の辺りを見るとベタ塗りが細かい線の網掛けになっているのが分かりますよね.細いレーザー光線を並べて線や塗りを表現するのです.

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押し型の方はアクリル板にやはりレーザー加工機で作ります.ハンコと同じ要領でへこませるところだけ残してレーザーを当ててゆきます.これがかなり時間が掛かるんですよね.

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革素材にレーザーで焼き入れを行い,型押し作業は革を水に塗らした状態で,押し型を押しつけてクセを付けます.3cm程度の小さな型なんですが,クランプで締めて行くのが大変でなかなかの力仕事.クランプだと力点が回転するのでぶれて失敗することも数多あるし,クランプの金属粉が革に触れると変色することもあってかなり神経を使う作業です.


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レーザーのみ.

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型押し後.作業は大変だけど型押しをすると見栄えが全然違うんですよね.

型押しが完了すれば乾燥させて,寸法通りの切り出しをします.
あとは通常のコインシリンダー制作過程となります.トコ(裏面)処理,コバ(切端)処理をして,縫うための下穴を空けて,金具取り付けて,縫製作業,底板と取り出し口に硬化剤を塗って,最後に取り出し口の微調整と言う流れになります.

ごく簡潔に書きましたが,それぞれの作業で微調整や失敗も多いので結構神経を使うのでここまで仕上げるのに結構試行錯誤をしました.


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しかし,出来映えは自画自賛もやむなしのもの.もともとの絵が可愛すぎると言うことは言わずもがなではありますが,革にくっきりと印字されているだけで無く,型押しの立体感が,ただの印刷物では無い存在感を与えてくれます.
焼き印を押しても同様のことは出来るんでしょうが,レーザーの細やかさはまず出せないでしょうし,焼きと押しのエリアを分けるようなことや,レーザー出力を調整して塗りの階調を出すような調整も出来るので,やる気さえあれば,結構凝ったことが出来そうです.
また,お気に入りの絵柄を手で触って確認出来るという感覚はちょっと今までになかったんじゃないでしょうか.持っていて嬉しくなる逸品ですよ.

委託制作については,受け付ける方針で考えています.もちろん図柄の版権がクリアになっていることが前提です.それと,本革製500円玉用コインシリンダーと同様にしばらくは会場で実物をご覧頂いた方を対象にさせてもらうつもりでいます.ハンドメイドであること,出来映えのレベルについても実物を見て納得して頂いていただいておかないといけませんので.また,依頼者と相談しつつ進めさせて頂きますし,時間の掛る工程も多いため,通常のコインシリンダー制作よりも長い制作時間を頂きます.ご相談等ありましたらメールフォームにてご連絡頂きますよう.



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